日本の英語教育に関する俗説について

PUBLIC_FLAG_#{@journal.pf_int} RSS feed of Kisaragi's latest journal entries May 23rd 2009 23:31
最近、題名の件に関して首をかしげるような議論を世の中で見かけるので、覚え書き程度に書いておきます。

1. 「英語を教えると日本語がおろそかになる」という意見

外国語を教えると母語に負の影響があるという根拠がどこにあるのでしょうか。そもそも、外国語を多く教えれば日本語を教える時間が減るという理由などどこにもありません。外国語も日本語も、共に多くを教えればよいだけです。

授業時間数に限界があるという批判があるかもしれませんが、フィンランドの英語の授業時間数は日本よりも少ないことを知っての意見なのでしょうか?フィンランド語は印欧語ではないので、フィンランド人が日本人に比べて英語学習が明白に有利なことはあり得ないはずです。

2. 日本の英語教育は現状でもすぐれているという意見

日本とフィンランドの英語教育を引き合いに出した衝撃的な研究があるのでこれをお読みいただければ、上記意見がいかに根拠のないものかは明白になるはずです。

http://tinyurl.com/p4g6kh

私の行っていた学校では英語の授業時間数は多かったので、フィンランド人の 2 倍近く英語の授業を受けているはずですが、この資料を見る限り、高校を卒業してから 9 年経った現在でも、私がフィンランドの平均的な高校卒業生に到底及ばない程度の英語力しかないことは断言できます。ここに紹介されている問題を見る限り、私がフィンランドの高卒認定試験を受けても、合格できるとはとても思えません。読解でさえそうなのだから、聴解や会話となると悲惨の一言に尽きるでしょう。
名誉のために言っておきますが、私は高校卒業段階では、間違いなく英語の試験の成績は同世代の上位 5% には入っていたはずですので、「お前の努力が足りない」と言われる筋合いはありません。

これだけを見ても、日本の英語教育が非効率きわまりないことは議論の余地がないはずです。

私見ですが、日本人が英語の会話が苦手な最大の原因は、高校入学後に聴き取りを練習する機会が事実上ないからでしょう。教師は授業中ほとんど日本語でしゃべっているし、NHK のラジオ講座は通学前に聴ける時間帯には放送していないし、教科書朗読のテープを除いた聴き取り教材が授業で使われることもほとんどありません。英語を聴く勉強をする機会が 3 年間しかないのだから、聴き取れないのが当たり前です。そして、聴き取れなければ口語表現を勉強することもできないので、しゃべれないのもまた当たり前です。

ろくに教えもしていないくせに、「教えるべきことは教えている、これで十分だ」などとはどこの口が言っているのでしょうか。

3. 文法訳読法 (Grammar Translation Method) を擁護する意見

これについては過去にも書きました ( http://en.lang-8.com/journal/65252 ) が、典型的とも思える意見を Web 上で見かけたので批判しておきます。

==
過去、何十年にわたり日本の英語教育は「受験英語」に偏重しすぎていたため、その反動で、昨今は「コミュニケーション志向英語」に注目が集まるようになっているが、この二項対立に問題がある。中学・高校・大学で十年も教育を受けたのに英語がしゃべれないではないか、などと批判する人がいるが、多くの日本人が海外旅行に出掛けても何とかコミュニケーションできているのは、英語教育による基礎力があるからだ。
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/life/gooeditor-20090509-01.html
==

内容の当否以前に、非論理的と言わざるを得ません。英語教育の現状を批判する人は「現状には問題がある、もっと教育方法を改善すべき」と主張しているのに、この種の論者は「現状には問題がない」と頭ごなしに相手の問題意識を否定してしまっています。現状に改善の余地がないとは到底思えない以上、これはもはや議論ではなく、単なる価値観の押しつけです。どうしてこんな没論理的な暴論が平気で知識層に受け入れられるのか、理解に苦しむと言わざるを得ません。


4. オランダや北欧(フィンランド除く)の英語教育を引き合いに出す意見

「オランダの生徒は極めて速く英語を身につける、日本もオランダに学ぶべき」というようなことが書かれている本を複数見かけます。呆れたとしか言いようがありません。オランダ語は英語ととてもよく似た言語なのだから、オランダ人が英語の上達が速いのは当然すぎるくらい当然です。
私でさえ、オランダ語の文章がときどき読めてしまうことがあるくらいです。もちろん、私はオランダ語を勉強したことなんて一度もないんです。ですが英語とドイツ語をちょっとかじっただけでもこれぐらいのことはできてしまうんですよ。母語としてオランダ語を使えるということが、英語学習上どれくらい有利かということは我々の想像を絶すると思います。

スウェーデンやノルウェーやデンマークを引き合いに出す例も見かけたことがありますが、これらもまったく同様の理由により、論ずるに値しない議論だと思います。

5. テレビで英語力が上がる?

同様の議論として、英語力の高いヨーロッパの国を引き合いに出して、「これらの国では英語のテレビ番組や映画が、吹き替えなしで字幕で放送されている、だからみんな自然に英語を覚えるのだ」という意見を多く見かけます。しかしこれも信じられません。日本でだって、英語の番組や映画は多く放送されていますし、吹き替えよりも字幕放送の方が多いでしょう。
私自身、英語圏の映画をよく DVD で見ますし、そういうときに吹き替えを使うことはあり得ませんが(たいてい英語字幕で見ています)、字幕を外すと完全なお手上げになってしまいます。このように、文字の助けがあるとなしでは聴き取りの難易度は雲泥の差なので、字幕付きの番組を見ることが練習になるとは思えません。
May 24th 2009 01:40 王っさん

 ただの初心者の意見ですが、現在の言語授業は時間の無駄だと思っております。これは、日本の教育制度だけでなく、アメリカのいわゆるエジュケーションシステムも可哀想な状態だとよく言われます。僕は、学校で6年もスペイン語の授業を受けましたが、結局その時気に入らなくて、何百時間の人生を無意味で失ってしまいました。
 だが、社会人になると、やっと外国言語の価値を知って、本気を出して独学で勉強をやり直しました。いろいろのスペイン語の小説をよんだり、スペイン語に吹き替えた番組など(アメリカで住んでよかったな。ここのDVDのほとんどがスペイン語で楽しめる)にこどわったり、どこに行っても必ずスペイン語MP3sが入ったmp3 playerを持ち歩いたりしてて、より深くの理解が出来ました。そして、一年半だけかかりました。
 たしかにスペイン語が英語によく似たわけがあるが、僕はこうして、英語に全然似ていない日本語をここまで習得して参りました。今までのexposure timeは2年間です。とはいえ、実を言うと、頭がよくない、それに真面目に、しっかり大人しく生きていくヤツと言えません。大学の成績は最悪でした。なのに、この"one of the hardest languages in the world"と言われた「国語」は、逆に簡単だと考えます。それはなぜです。なぜなら、椎名林檎がものすごく大好き、ナイナイがものすごく大好き、そして言語より日本の文化のほうがものすごく大好きです。こんな言語に対して愛情と興味を推進しない教育制度は、効果的であるわけがないだろう。必須言語requirementsは、各国の歴史に見れば、無駄です。義務兵役もない限りに、強制言語教育は望んだ結果を果たされざると思っております。

What the hell just happened? All I came to do was share a link...
http://www.antimoon.com/learners/tomasz_szynalski.htm

役に立ったらよかった。
May 24th 2009 03:21 翔太

私にたくさんの日本語を読み難いけれど、「Thomasz」と読んでから、知りたくなりました。私は始める外語がKlingon語でした。今笑うんだろうけれど、言葉を早く覚えました。2時間から言葉の6分を覚えましたなよぉ!でも、始めにゆっくり覚えました。その高速は来たけれど、試験プログラムを保存しましてからだけです。日本語を勉強のために同じなプログラムを作ったけれど、退屈が過ぎでした。類語も問題でした。ん〜〜・・・多分、ほかのプログラムを試みる方がいいです。類語が欲しくなかったら、大阪弁の言葉だけ言いましょ。
May 24th 2009 13:27 Rose_Garden

Hello, ^___^
Thank you so much for the interesting entry.
I do agree with you.
In Japan, most of the students learn Japanese for 6 years but I seldom can find Japanese who can use English around myself. I'm not so sure the reason why, but most of us think that English is a tool for passing the entrance exams for colleges or university. Most of us don't realize that English is a nice communication tools.

Since I noticed this point when I was 16, I have been using the Internet, NHK radio or TV educational programs.

Actually, I believe that it depends on our way of thinking whether we can use this nice tool or not. Right now, I don't study English at school, but thanks to my friends and teachers, I have been able to use this nice communication tools everyday, though I don't think my English is not good enough even now.
We should remember this saying that "Practice makes perfect."
May 24th 2009 17:00 Kisaragi

この記事は日本国内の特殊事情について書いたのに、王っさんや Kohlrak さんからコメントをもらえるのは嬉しい誤算でした!

@王っさん
日本語を 2 年間しか勉強していないとはちょっと信じられないです。王っさんより日本語がうまい人は、Lang-8 の中でも数人しか見たことないですよ。しかも、他の人は全員漢字文化圏の生まれ育ちだったと思います。
スペイン語や日本語と違って、英語の場合は勉強しないことによる不利益が大きすぎるので、同列に語ることは難しいと思います。世界中で英語が必須科目になってしまうのは仕方がないことです。ただ、その分英語教育には世界各地でのいろいろな実績があるわけですから、効率のよい教育方法を作り上げることもできるはずです。

ところで、Szynalski のページを紹介してくれてありがとうございます。この人の書く英文はとてもわかりやすいですね。僕もこういう文章が書けるようになりたいです。

個人的に一番面白かったのは以下の文章です。英語に限らずどの言語を学ぶにも参考になりそうですね。
http://www.antimoon.com/how/mistakes-how.htm

@Kohlrak
少し前に比べて日本語がかなり上手になりましたね。すごい!
残念ながら、日本語の勉強には SuperMemo はあまり役に立たないかもしれませんね。Szynalski の場合、ポーランド語と英語はある程度似ていたからうまくいったのだと思います。それに比べて、日本語と英語は違いすぎます。

@Rose_Garden
> Since I noticed this point when I was 16, I have been using the Internet, NHK radio or TV educational programs.

I've wondered how you were able to improve your English so rapidly. Undoubltedly, your English is overwhelmingly better than mine when I was in your age. Now I see the reason.

I envy you that you could use Internet when you're 16. When I was 16, using Internet was very expencive (I was charged 20 or 30 yens [or cents] every minutes!), and I don't have my PC. I could use it only an hour a day. I used it almost for learning a programming language, which has already become obsolate XD
May 24th 2009 22:02 翔太

>>少し前に比べて日本語がかなり上手になりましたね。すごい!

ありがとう。

>>残念ながら、日本語の勉強には SuperMemo はあまり役に立たないかもしれませんね。Szynalski の場合、ポーランド語と英語はある程度似ていたからうまくいったのだと思います。それに比べて、日本語と英語は違いすぎます。

SuperMemoは役に立たないけれど、"kvoctrain"は役に立つでしょう(SuperMemoを使うためにDOSが必要です)。本当に、違いすぎると思いません。でも、きっとするためのいつのようが有ります‥・それが「する」です。私がしますなぁ。良かったら、皆さんに言います。
May 25th 2009 01:15

フィンランドの場合は確かに語族のレベルで英語とは異なっていますが、「共通する語彙も多い」、「テレビ放送で英語によるドラマがそのまま放送されていて、子供の時から英語環境に親しんでいる」などの違いがありますので、一概には比較対象になりません。
May 25th 2009 01:36 Kisaragi

@Kohlrak
ぜひ、使ってみて感想を聞かせてください。楽しみにしてます。

@kaz
コメントありがとうございます。
もちろん、完全に同一線上の比較はできないと思いますが、私のように 2 倍の時間をかけてもまだ追いつけないというのは明らかにそうした要因を越えた差だと思いますよ。また、口幅ったい言い方になりますが、私は平均よりは相当物覚えが速いほうだと思います。

ちなみに、アメリカ人がフィンランド語を覚えるのにかかった時間はさすがに日本語の 2 倍ということはないようですよ。日本人が英語を学ぶ場合、漢字のハンディがないため、この差はさらに縮まることでしょう。

http://www.asdk12.org/depts/world_lang/advocacy/ForeignServiceInst.pdf

テレビに関しては、本文中の 5. をご参照下さい。
May 26th 2009 00:35 翔太

>>ぜひ、使ってみて感想を聞かせてください。楽しみにしてます。

しますな。

Journals Statistics

Latest entry

See more >>

Latest comments

See more >>

Entries by Month