書籍紹介「外国語学習の科学」
※この記事は日本語圏特有の事情を扱っているため、日本語で書きます。なお、私の文章はかなりの悪文だと思いますので、学習者の方はこれがわからなくとも気にしないでください。
Lang-8 に出入りを始めて以来衝撃を受け通しなのが、世界各地の学生の語学力の高さだ。特に英語に関しては、二十歳前の学生がほとんど完璧に操りこなしている例も珍しくなく、彼我の差に心底打ちのめされざるを得ない。もちろんこうした学生の多くは語学が得意であり好きでもあるのだということは容易に推察できるが、それにしても、である。帰国子女を除けば、日本の高校生には、いや大学生であっても、これほどの語学力を備えた人は皆無に等しいであろう。
そうなると、日本の語学教育は致命的な欠陥を抱えているのではないかということが容易に想像できる。その問題を考えるべく手に取ってみたのが掲題の書、白井恭弘「外国語学習の科学」(岩波新書)である。同書は「第二言語習得論」という学問分野の現状を一般向けにわかりやすく概説したものだが、これを読むと日本の語学教育のお寒い現実が否応なしに浮かび上がってくる。我々は余りにも科学的知見を軽視し、その結果多くの生徒が非効率な教育の犠牲になってきたということが容赦なく暴き出されてしまうのである。
同書によると、第二言語習得論とは「外国語を学習する」という営みを科学的に分析し、よりよい語学教育制度の構築に役立てようというものである。その中では当然、母語と学習対象言語の言語学的距離が学習に与える影響から、「読み、書き、聴き、話す」という四技能のうちどこに重点を置くべきかということについてまで、様々な問題が扱われる。この分野は比較的新しいものであり未解明の問題も多いとのことなのだが、それであってさえ日本の既存の語学教育制度を批判的に分析するには十分であることを思い知らされる。
同書では、現在日本で主に採用されている語学教育方式を「文法訳読方式」と呼んでいる。これは我々にとってお馴染みの、「教科書を朗読し、和訳し、そしてそれに教師が文法的解説を加える」というやり方を繰り返すものだが、この方式は「言語習得の原則からかけはなれている」と、見事なまでに切り捨てられてしまう。同書によると、第二言語習得に必要なのは何よりもまず「インプット」の量と「アウトプット」の必要性であって、同方式はこれを両者ともに欠くというのである。
このような批判に対して通例持ち出されるのが、「いわゆるコミュニケーション重視の語学教育は文法軽視を招き、結果的に読解力を低下させる」という批判である。実際「日本の学校の英語教育は『受験英語』の教育であり、役に立たない」というようなことを言う人の多くは単に勉強不足であるというのも事実であって、この批判はそれなりの説得力を持っているようにも見える。しかし同書によると、第二言語習得論の立場からは、このような批判は既に実験や調査によって反駁されているというのである。同書が示唆する現実は非常に残酷であって、第二言語習得の効率は、教育方法の巧拙によってあまりにも極端に左右されてしまうというものである。ここまで事実を積み重ねられると、もはや文法訳読方式を弁護する余地はどこにもないと言ってよい。
となれば、急務なのは一刻も早い教育方法の改善と、科学的知見を教育の場に継続的に導入していく姿勢の徹底である。私自身は、英語が世界を支配しようとしている現状を激しく嫌悪するものではあるが、だからといって学習を拒むことは何の利益にもならないし、まして英語だけが語学というわけではない。受ける教育の質は高いに越したことはないし、外国語は知らないよりも知っていた方がよい。その意味で語学教育の改善に反対する余地はどこにもない。
また、不幸にして非効率的な語学教育を受けてしまった我々は、その欠点を自ら補う必要がある。その手がかりを探し、自ら対策を組み立てるためにも、同書で紹介されている知見は大いに助けになるであろう。
ともあれ、Lang-8 のような場に出入りしている日本語話者にとっては共通の問題意識に光を当てた一冊である。同書あるいはその類書に目を通しておくことは決して無駄ではあるまい。
Lang-8 に出入りを始めて以来衝撃を受け通しなのが、世界各地の学生の語学力の高さだ。特に英語に関しては、二十歳前の学生がほとんど完璧に操りこなしている例も珍しくなく、彼我の差に心底打ちのめされざるを得ない。もちろんこうした学生の多くは語学が得意であり好きでもあるのだということは容易に推察できるが、それにしても、である。帰国子女を除けば、日本の高校生には、いや大学生であっても、これほどの語学力を備えた人は皆無に等しいであろう。
そうなると、日本の語学教育は致命的な欠陥を抱えているのではないかということが容易に想像できる。その問題を考えるべく手に取ってみたのが掲題の書、白井恭弘「外国語学習の科学」(岩波新書)である。同書は「第二言語習得論」という学問分野の現状を一般向けにわかりやすく概説したものだが、これを読むと日本の語学教育のお寒い現実が否応なしに浮かび上がってくる。我々は余りにも科学的知見を軽視し、その結果多くの生徒が非効率な教育の犠牲になってきたということが容赦なく暴き出されてしまうのである。
同書によると、第二言語習得論とは「外国語を学習する」という営みを科学的に分析し、よりよい語学教育制度の構築に役立てようというものである。その中では当然、母語と学習対象言語の言語学的距離が学習に与える影響から、「読み、書き、聴き、話す」という四技能のうちどこに重点を置くべきかということについてまで、様々な問題が扱われる。この分野は比較的新しいものであり未解明の問題も多いとのことなのだが、それであってさえ日本の既存の語学教育制度を批判的に分析するには十分であることを思い知らされる。
同書では、現在日本で主に採用されている語学教育方式を「文法訳読方式」と呼んでいる。これは我々にとってお馴染みの、「教科書を朗読し、和訳し、そしてそれに教師が文法的解説を加える」というやり方を繰り返すものだが、この方式は「言語習得の原則からかけはなれている」と、見事なまでに切り捨てられてしまう。同書によると、第二言語習得に必要なのは何よりもまず「インプット」の量と「アウトプット」の必要性であって、同方式はこれを両者ともに欠くというのである。
このような批判に対して通例持ち出されるのが、「いわゆるコミュニケーション重視の語学教育は文法軽視を招き、結果的に読解力を低下させる」という批判である。実際「日本の学校の英語教育は『受験英語』の教育であり、役に立たない」というようなことを言う人の多くは単に勉強不足であるというのも事実であって、この批判はそれなりの説得力を持っているようにも見える。しかし同書によると、第二言語習得論の立場からは、このような批判は既に実験や調査によって反駁されているというのである。同書が示唆する現実は非常に残酷であって、第二言語習得の効率は、教育方法の巧拙によってあまりにも極端に左右されてしまうというものである。ここまで事実を積み重ねられると、もはや文法訳読方式を弁護する余地はどこにもないと言ってよい。
となれば、急務なのは一刻も早い教育方法の改善と、科学的知見を教育の場に継続的に導入していく姿勢の徹底である。私自身は、英語が世界を支配しようとしている現状を激しく嫌悪するものではあるが、だからといって学習を拒むことは何の利益にもならないし、まして英語だけが語学というわけではない。受ける教育の質は高いに越したことはないし、外国語は知らないよりも知っていた方がよい。その意味で語学教育の改善に反対する余地はどこにもない。
また、不幸にして非効率的な語学教育を受けてしまった我々は、その欠点を自ら補う必要がある。その手がかりを探し、自ら対策を組み立てるためにも、同書で紹介されている知見は大いに助けになるであろう。
ともあれ、Lang-8 のような場に出入りしている日本語話者にとっては共通の問題意識に光を当てた一冊である。同書あるいはその類書に目を通しておくことは決して無駄ではあるまい。
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Oh, I wanted to thank you for the occasion to check my reading skills, too. To my joy I understood quite a lot :)
私も2週間ほど前に、このサイトを知って以来、毎日驚きの連続です。「日本語は特殊だから英語が苦手なのは仕方ない」などという良く言われる理由が単なる言い訳に過ぎないことを思い知らされます。「受験英語のお陰で読み書きはできる」という幻想も、このサイトでちょっとした日記さえ書けない自分と向き合って、あっさり打ち壊されました。日本の英語教育にかなり欠陥があることは間違いなさそうですが、それを悲観ばかりしていても仕方がないので、今まで足りなかった部分を、このサイトをうまく利用して、補って行きたいと思っています。
「外国語学習の科学」、早速 Amazonのカートに入れました。(^^)V
そうですね。日本語の場合、読み書きの難易度は漢字圏の中と外で極端に変わってくるはずなんですが、漢字圏外の人でも相当な文章を書ける人が多くいることには本当に驚かざるをえません。
この本には、「文法訳読方式」は語学の勉強というよりも「英文和訳の練習」だ、というようなことも書かれていましたが、全くその通りだと思います。英文にぴったり当てはまる日本語を探すという勉強は実は「日本語」の勉強なんですよね。英語ではなくて。
ちなみに、この本の著者はできるだけ客観的に書こうとしているはずなのですが、それでもやはり文法訳読方式への恨み節が紙面の裏から聞こえてくるのが面白いです(笑)白井氏は高校で英語教師をされていた経験もあるそうなのですが、そこでの実績にも多少触れられていて、説得力があります。
@mind-turpizm
You read this?!!! Formidable!!!!
I can assure you that you have a potential to read any Japanese texts (at least except for literatures). It is amazing that you could read it, because it is very Japanese -- I mean, I suppose it is almost impossible to translate it into European languages preserving grammatical structures. At least I cannot translate it into English by myself. If I had to do this, I would "rewrite" this in English. (In writing comments in Japanese on European intermediate learners' entries, I am always trying to write them to be translatable directly into European languages -- I often feel it is even much harder to write them in English!)
@ぼのにーさん
そうですね。ただ、我々の受けた教育も、読み書きに関しては全く無駄ということもない気がします。私自身、Lang-8 に出入りを始めてからの僅かな間に、だいたいのことは曲がりなりにも書けるような手応えは感じられるようになりました。あとは「自然な文章」が書けるようになればと思うのですが、これが本当に難しいですね。もう一段階か二段階の飛躍の必要性を痛感しています。
日本人は、大学の第2外国語で選択した言語をちゃんと話せる人は少ないですよね。私はフランス語を選択していたけど、まったく話せません^^;)
本人の取り組み方の違いかな、と思っていましたが、Kisaragiさんの日記を読んで、英語だけではなく、すべて語学教育に関しては何かしら欠陥があるのかな、と思いました。
「外国語学習の科学」、とても興味を持ったので読んでみます。もう図書館で見つけてしまいました!
以前、「多文化共生」についての大学講義を受けた事があります。日本にいる外国人について焦点を当てた講義でしたが、外国人がどのように日本語を習得するかについてもふれられていました。あくまで後日談なのですが、その先生は、どうやら授業料が高すぎるため自分の子供をインターナショナルスクールに入れられないようで、そちらの方についてのコメントは避けていた気がします。そういう葛藤を是非、公的な学校にも注いでいただきたいとささやかに感じましたけど、、。おまけの話ですが、インターナショナルスクールの卒業生を話をする機会がありまして、どうやらあまり国語の授業時間数は無いとの事。おかげで、パソコンなら漢字は書けるけれど、、手書きでは漢字が書けないと言っていました。
参考になる本と意見、ありがとうございました。
受験英語を乗り越え、なお英語が好きな人は、こういうサイトで楽しみながら自己研鑽し、英語を実用的なものに上げて行けるのですが、多くの人はただのコンプレックスにしかなってないように思います。少なくとも、英語は楽しいものだと思えるような教育をしてもらいたいものです。
それはそれとして、Kisaragiさんの、このサイトを通じて書けるという手応えを感じられているというコメントは、とても励みになります。ありがとうございます。
(長文コメント、申し訳ありません。)
一方、私は大学に入ってから、はじめて別の教育方式があると知ります。最近、大学では、学生が先生の教え方や意見についてアンケートし、評価します。それは教育の改善にいいかもしれません。
Kisaragiさん、明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!^^
大学の第二外国語の教育はもしかすると英語よりも悪いかも知れませんね。私はドイツ語を取っていましたけれど、一年間で動詞の活用から仮定法まで文法を一通り履修して、二年目には古典を読ませるという、どう考えても無茶なやり方だったことを覚えています。こういう勉強法をすると、ドイツ語が高尚なことしか言えないとてつもなく難しい言語に見えてしまって本当に困ります。
@nekoneko
お褒め下さってありがとうございます。学習者の方に恥ずかしい文章は見せられないと思って気合いが入った結果かも知れません。
「多文化共生」とは少し異なる話題かもしれませんが、以前興味深い情景を見たことがあります。子供がお祖父さんと二人で話をしていたのですが、おそらくその子は国際結婚で生まれた子供で、そのお祖父さんはアメリカ人だったらしく、英語しか話せないお祖父さんと日本語しか話せない子供の間でなかなか会話が成立しないのです。結局、お祖父さんは辛抱強く易しい英語で話しかけていましたが、国際化が進むと家族の関係も難しくなってくるのだということを実感しました。子供をバイリンガルに育てるというのは単なるファッションではなく、家族で言葉が通じ合うようにするために必須の課題だったりもするのですね。
@ぼのにーさん
長文などとおっしゃられると、私の文章の立場がありませんのでどうぞお気遣いなく(笑)
日本語教育について、おっしゃることにまさに同感です。もう一つ付け加えさせて頂くならば、日本語(というより各言語共通)の「話し方」も教育が必要な気がします。読み書きにしろ会話にしろ、公的な場でのそれは私的な場のそれと大分あり方が違うわけですし、練習なしにできるわけではないと思うのですよね。敬語を筆頭に。
私自身、英語に関して抱えている劣等感の量に関しては自信があります。英語に関しては本当に屈辱的な思い出しかないし、学生時代は英語が嫌いで嫌いで本当に仕方がありませんでした。それで、なぜ嫌いだったかを今になって考えてみたら、教科書の退屈な文章を単調に書き換えるような課題ばかりだったからというのが最大の原因である気がします。
反面、Lang-8 に出入りするようになって以来、始めて語学の勉強が楽しいと感じるようになりました。聞いたことがない話を沢山聞けるし、何よりもまず地球の裏側の人から自分一人に向けられた言葉をもらえるわけだし、自分の話を興味を持って聴いてくれる人がいるし、身の入り方が全然違うわけです。この楽しさが何かということを考えてみたら、結局は未知の人と触れ合うということなのではないかと思うのですが、学校での英語教育からは「英語は国際語」という陳腐なお題目以外、この点について何も感じることがなかったように思います。
I'm afraid there might be Japanese students of the same age as yours who cannot understand this entry.... (@_@;)
> When you're so shocked about it, I rather expected you to think "right, right, why are you so happy of reading something like this? :/", really...
Sorry, I don't catch what you mean....
@Niki
おめでとうございます!こちらこそよろしくお願いします!
台湾でもそうなのですか。韓国でも似たような問題があると聞いたことはありますが……。
この本は「第二言語習得論」という学問分野の非専門家向けの概説書に過ぎないので、おそらく台湾でも同じような本が出ているのではないかと思います。
残念ながら日本ではこの本はそれほど評判になっていないようですが、学校の先生や教育関係官庁の人たちには是非読んでもらいたいものだと痛感しております。
Ah, sorry, perhaps my word caused you a misunderstanding....
When I said "formidable", I meant to say "wonderful" or "marvellous", not "I'm frightend". But I've just found this word didn't have such meanings in English. I confused it with the same word in French. (>_<)
...How? o.o
I just didn't make myself clear in my reply. When I first commented this entry I said that I'm happy I could read this, but I thought you wouldn't find it as anything to be proud of, I thought you would rather say "why are you happy that you can read such a simple entry?" in your thoughts. But I was suprised when you said it's so hard for the learners.
Ah, I knew what you meant by "formidable", so don't worry ^.^ It was probably me that caused the confusion with my reply.
ご紹介いただいた本、先ほど読み終えました。元々英語学習の方法にはとても興味があったので、いろんな学習法の本を読んできましたが、こんなに科学的で、かつ、わかりやすいものは初めてです。自分なりに考えていた学習法とも重なることが多く、さらに新たな気付きもたくさんいただきました。今後の学習に非常に大きな動機付けになりそうです。いい本を紹介いただいて、本当にありがとうございました!
私自身、この本を読んだときは本当に衝撃でした。世界にはこんなに知識の蓄積があるのに、日本国内で手に入る語学書(特に英語の本)のほとんどにはそれが全然反映されていないのですから。日本人が英語ができないのはあまりにも当然ですよ。
実は以前から、日本国内で出ている英語の本はどうしてこんなにいい加減なものが多いのだろうと悩んでいたのです。ほとんどのものは個人的な思いつきを書いただけで、言語学の新書を一冊読めばわかる程度の誤りに満ちあふれています。
対して、西欧各国から出ている語学教科書はとても構成がよく考えられていて、いかに最小限の努力で最大限の効果を上げられるかという工夫が大いに感じられました。
こうした違いはどこから出ているのだろうと考えた結果、この本に行き当たったのです。
愚痴になってしまいますけど、教育大なんかではこういうことを教えないんでしょうかね?
実は私は数学の教員免許も持っていますが、大学で教職科目を履修したときは「教育とはなんぞや」というような話ばかりで、「子供はどのように数学概念を学ぶか」というような話はほとんど聞かなかったような気がします。もしこれが私の個人的経験というだけでなく、世の中全般に当てはまることだとしたら、時代遅れの非効率な勉強を強いられ続ける子供達が可哀想ですよね。